醤 油 に つ い て 概 略
●片上醤油●醤油の作り方-->その補足板|

醤油屋のポリシーも含めた原料の詳しい話

そして木桶発酵のこだわり



まず、丸大豆について

丸大豆とは、巷で言うところの大豆そのもので、規格品でも品種名でもありません。
丸大豆=大豆
醤油業界において丸大豆に対応する言葉として、脱脂大豆(脱脂加工大豆)があります。
大豆(丸大豆)<>脱脂大豆(脱脂加工大豆)
これは、大豆から油を抽出したもので(製油メーカーの仕事です)フレーク状の物です。
ほとんどの醤油はこれを原料にしています。
大豆ー大豆白絞油=脱脂大豆
一般に大豆とは当然丸大豆のことなのですが、醤油屋にとっては大豆とは脱脂大豆のことなのです。
脱脂大豆と区別するために丸大豆と称するわけですが、
「特殊な(良質な)原料を使いました」と言うことを伝えたくてただの大豆のことをわざわざ丸大豆と言うこと、無きにしも非ず・・です。

ラベルの原材料表示について


丸大豆は本来たんに”だいず”or”大豆”と表示すべき物です。
脱脂大豆(脱脂加工大豆)を”大豆”と表示することは出来ません。

それぞれのメリット


大豆・・・香り穏やか、色上品な醤油を作ることができる
脱脂大豆・・発酵期間の短縮とコスト、うまみの強さに優れる。
ですから、大豆を使った醤油は品質志向の高級品に、脱脂大豆は大量生産に向いています。
もろみ蔵

 雑学

        大豆の品種・・・・・    鶴の子、玉誉れ、艶麗etc
        大豆の規格・・・・・    1等、2等、3等、4等、5等、等外
        用途・・・・・・・・    小売り、煮豆用-------1、2等
                                味噌、納豆-------------2、3等
                                豆腐----------------------3、4、5等
                                醤油、製油原料-------5等、等外
                                        
                ただし、1等を使った豆腐も醤油もあります。あくまで目安です。


 醤油の分類 ---(わかりやすいように味噌で対応させると)
 
        醤油    こいくちしょうゆ            仙台系長熟麦味噌
                                                味、香りに優れ、オールマイティ。
                うすくちしょうゆ            信州系米味噌
                                                色薄く、香りの穏やかなしょうゆ。
                たまりしょうゆ              中部八丁味噌
                                                旨み、こく命。
                しろしょうゆ                京都白味噌
                                                きしめんの汁はこれでないと。
                さいしこみしょうゆ          清酒で言う貴醸酒  二度仕込み
                                                旨みとほのかな甘み。
                                                
                刺身しょうゆ、手作りしょうゆなどは自称、通称名です。


醤油の等級

                JASでは、醤油の等級を定めています。
                ラベルのJASマークの下に示されています。
                標準        上級        特級の3等級があり、さらに特級の中で、
                特級規格として    特選、   超特選があります。
                等級についてはいろいろと細かく規定されていますが、
                旨みの強さを表す、全窒素分と言う数字を挙げると、
                
                標準(1.2以上)、
                上級(1.35以上)、
                特級(1.5以上)、特選(1.65以上)、超特選(1.8以上)
                
        時に特売で、上級の醤油が安く売られていますが、これは安くもなんともなくて当たり前
        の話ですから、等級を確認されることをお勧めします。
1.概略

醤油は大豆と小麦と塩(と水)を原料として、そこに様々な微生物が働いてつくられます。
大豆の旨みを利用した調味料は中国、朝鮮、日本を中心にアジアで広く使われています。
これはアジアの高温多湿な気候がこれらの地域で、黴の利用を発達させた事に起因します。
大豆はそのままではさして旨い物ではありません。
しかし大豆に黴(かび)をはやして、その酵素の働きで大豆の蛋白質を分解してうまみを感じるアミノ酸にすると素晴らしい調味料になります。
大豆とともに使用される小麦は、やはり黴の酵素の力でデンプンが糖に分解されて香りを始めとする風味のもととなりデンプンが分解されてできた糖分は乳酸菌(ヨーグルト製造につかわれる菌です)や酵母の作用(発酵)を受けて醤油の風味を形作ります。
     分解・・・・○○○○・○○+○○・○+○+○+○
     発酵・・・・○○+○○・◇□+△▽
                       分解とはつながっている物の結合を切っていくことです。
                       発酵とは・の左右で全く違う物ができます。
2.歴史

醤油は日本ではいわゆる味噌溜りから始まったと考えられています。
味噌の出来が悪いと水分が上に浮いてきますが、その汁を調味料に使ったところ大変おいしかったというあたりではないでしょうか。
大豆発酵食品がいつからあったかと言うことについては、奈良時代、唐招提寺を興した鑑真が渡来の際、醤(ひしお)を持ってきたという記録があります。
ひしおはいまの浜納豆に近い物ですが、多くは持っていけない荷物の中にこれだけのひしおを持ってきたというのは、いまの日本人が海外へ行くときスーツケースにインスタント味噌汁をしのばせるのと通じるものがありませんか。
ひしおから味噌が生まれ、味噌溜りから醤油が生まれてきました。 歴史上醤油屋という商売が記録に出てくるのは室町時代になります。
この頃は非常に貴重で高価な調味料でごく一部の人が使っていたに過ぎません。
意外にも多くの日本人が醤油を使うようになるのは江戸時代に入ってからです。
清酒と同じく江戸初期においては関西の醤油はその品質を認められ、湯浅、小豆島などから江戸に運ばれていました。
これは船の便が良かったからです。その後野田、銚子の醤油が江戸好みの味を作り、関西の醤油を駆逐しました。
しかし、味噌と同じくそれぞれの地方に特徴ある醤油屋が育ち、現在2700社前後が操業しています。

3.成り立ち

概略で述べたとおり、醤油は基本的には大豆、小麦、食塩からつくります。
何百年と言う醤油の歴史を通してあらゆる手法が試されましたが、
現在では蒸した大豆と煎った小麦を混合して、麹黴をつけ、食塩水に仕込むと言うところに落ちついています。
ただし小麦については近年超高圧の蒸煮処理によるものもあります。
原材料表示にアルコールが記載されている醤油がありますが、
これは醤油に生育してくる産膜性酵母(いわゆる醤油のカビ)の防止が目的です。
保存料として記載されている安息香酸類も同じ
その他、よく使われる副原料、添加物について整理しますと、
アミノ酸液
植物性蛋白の加水分解物です。具体的には小麦グルテンやとうもろこし蛋白を 酸分解した後中和したものです。発酵法によるグルタミン酸ソーダ製造廃液を利用したものもあります。 旨みの補強を目的としています。特級には使用できません。
酸味料
PH変動に抵抗するバッファー特性の向上がねらいです。 乳酸、酒石酸、琥珀酸がよく使われます。
調味料
調味料である醤油に調味料というのも変ですが、グルタミン酸との相乗効果を狙って核酸系調味料(イノシン酸、グァニル酸)がよく使われます。
甘味料
醤油は西に行くほど甘み志向が強まりますが、特に甘みを付けたいときに甘草エキス(グリチルリチン)、ステピオサイド(ステビア)、アスパルテーム、 サッカリンソーダなどが使われます。
増粘材
醤油の粘性を高めて、食品にたくさんの醤油を絡めておいしくしようとするものです。キサンタンガムがよく使われます。
以上の添加物は本来まともに醤油ができれば不要なものでしたが、
昭和初期から20年代にかけて、如何に少ない原料から早く醤油を造るかという
課題に対して出された答えでした。

ただその味に慣れ親しんだ人も多く、現在もいろいろ味付けされた醤油が生産されています。
現在大手といわれる企業は前述の厳しい時代にも品質を維持し、まっとうな醤油造りを守り通したところがほとんどです。
そして、現在、醤油造りはアベレージレベルの製品を安く、安定して供給するための発酵工業と、嗜好品としての醤油を職人芸で追求する醸造業とに役割分担が進んでいます。


since from 97/7/15 作成者:山本しげゆき 原案:片上裕之
Lastmodified:2008/06/17